■専門家インタビュー
人材開発
ファシリテーター
相田 浩康 様
外資系製薬会社勤務の後、学校、スポーツ団体のチーム作りや中小企業から大企業まで様々な企業、階層の組織開発(組織の様々なズレ解消 他)に体験学習、ボディーワークや対話を用い関わる。
例えば、上司と部下の会話が成り立たないといった困りごとは、野外で体を動かしながら、本音が出てくる状況をとらえて解決していくのです。
本来の自分が見えてくる
PAA21は非日常です。日頃のしがらみやビジネスのルールに縛られている人たちにとって、そうした考えを取り払うきっかけになります。
後ろ向きの性格であるのに、無理をして前向きな性格を演じているとか、前向きな性格なのに面倒だから後ろ向きのふりをするとか、本来の自分とは違う働き方をしている人たちがいます。その“殻”を外し
て、その人が生きやすい方法や効果が出る働き方のスタイルを学ぶ場です。
また、野外教育は多くの人たちにとっておそらく初めての経験ばかりです。ですから参加者は皆、対等の立場になれます。座学では往々にして、そのテーマを勉強している人の方が多く発言できます。つまり、経験の差が出やすいのですが、野外教育のように、初めてのことや知らないことをする場合は、参加者の経験値に左右されにくいのです。
分からない領域への挑戦
野外教育では、その人自身の問題解決能力や人間力が試され、現状(強み、課題)が明確化します。日頃リーダーシップをとっている人が急にとれなくなったりします。それは、未体験の領域に入ると思考
が停止する傾向があるからです。
意外に、普段大人しい人が成功したりします。こうしたことは、新しいプロジェクトに入っていく時や、新しい関係性をつくらないとならない場合の練習になります。この経験が、新たな仕事にどう生かす
かというシミュレーションになるのです。
例えば、8mもの高さのハイエレメント*へのチャレンジは、頭で分かっていても体が動きません。これを職場に置き換えてみると、年上の部下や厳しい上司などコミュニケーションがとりにくいといった場合に、頭で分かっていても言葉に出ない。同じことにどう対応するかが、ここでは繰り返し練習できるのです。
相手の気持ちに気付く
10~20人のある中堅リフォーム会社様の例です。10代、20代の若手から6 0代のベテランまでで構成され、やる気があって元気なのですが人間関係をつくるのが難しく、ピリピリした雰囲気で仕事をしています。そうなると、頑張っているけれど結果がついてきません。
そこで60代と体力のある10代、あるいはいつも言い争いばかりしている人たちを、自然な流れで組むように促進していきます。そうすると何が起こると思いますか。
社会的に地位の高い60代と、低い10代の立場が野外では逆転するのです。若手の方が体も動くし飲み込みも早いのです。
60代は日頃若手に「こんなこともできないのか」と無自覚に言ってしまいがち。言われる方は気分が悪い。けれど、野外教育で立場が逆転すると、そこで初めて相手の気持ちに気付くのです。そうすると
「ごめんな」が素直に言えるようになります。見えない上下関係がなくなり、本音で話せるようになります。人と人として向き合えるようになります。そういう関係性ができてきます。。
過程の共有を目指す
関係性づくりができたらしめたもの。次は仕事への応用です。戦略的に仕事をどう進めていくか。組織をどう動かすかの視点を、アクティビティを通じて学んでいきます。
また、ゴール、プロセス、人間関係、ロールを明確にしないと組織は動きません。アクティビティを通して、例えば「ゴールを全員が理解、共有していなかったからうまくいかなかったのだ」ということに気付く。どんな過程を通ればできるか、というのを全員が自分事として理解、共有しないと成功にはたどり着けません。
こうして、アクティビティを何度も何度も繰り返すことで、仕事の進め方と同時にあり方(スタンス)を学んでいくのです。アクティビティには正解がありません。「正解がない」というのも、仕事と似ているところでしょう。